その名称から、「ボタン一つできれいなプリントが簡単にできる」と思われがちなデジタル印刷。しかし、その裏側にはオペレーターの知識と経験、そしてすべての工程を見据えて「全体の流れを設計する力」が欠かせません。
今回は、野毛印刷社のデジタル印刷部門で13年にわたって現場を支え続ける宮城に、仕事へのこだわりやものづくりに対する考え方について話を聞きました。
全工程に携われるからこそ感じる面白さ

印刷課 Digital Printing Line 宮城
――まずは宮城さんの具体的な仕事内容から教えていただけますか?
宮城:デジタル印刷(以下、デジプリ)に関わること、ほぼ全てですね。メインはカラープリンターのオペレーターですが、それだけだと味気ないので、前後の工程もやってます。用紙の在庫管理や面付け、後工程の断裁や製本、セット作業まで。デジプリに関わる工程は、ほぼ一通り担当していますね。大変ではありますが、それが自分の成長につながったとも感じています。
――宮城さんは入社してからずっとデジタル印刷を担当されているんですか?
宮城:そうですね、もう13年くらい。
――13年!かなり長いですね。プリントそのものだけでなく、前後の工程までカバーされているのですね。
宮城:そうですね。正直、自分の性格だと淡々と作業をこなすのが性に合っていなくて。オペレーターのような機械を動かす仕事と、在庫やスケジュールを管理する仕事、両方やってるからこそ面白いと感じています。
また、面付けやワークフローの設計もするので、「どうすれば最も効率よく、きれいな製品を作れるか」を考えることもあって、おそらく「自分で設計したものを形にする」ということが自分は好きなんだと思います。「どっちかだけやって」って言われたら選べないな、って思います。
――確かに、オフセット印刷だと工程ごとに担当者が決まっていて分業されていることが多いですよね。デジプリはコンパクトな分、前後の工程に携わる機会も多そうです。
宮城:そうなんです。自分がプリントして断裁して、できあがったPOPが実際に店舗で使われているのをプライベートで見に行ったりします。それが嬉しいからやってるようなところもあって。部分的な作業にとどまらず、製品に一貫して関われることこそがデジプリの面白さだと思います。
デジタル印刷は「ボタンを押せばできあがる」?
――素人目線だと、デジタル印刷は「ボタン一つ押せばできあがる」イメージがありますが、実際はどうなんでしょうか?
宮城:確かにボタンを押せばプリントはできますが、実際は使う紙の種類がたくさんあって、それに合わせた設定が必要になります。あと、後工程を考えて面付けもしなければいけない。面付けはただデータを並べればいいわけではなく、「どうすれば断裁しやすいか」を考えながら面付けする必要があります。
ボタンを押せば自動で印刷物ができるわけではなく、案件や仕様によってベストな設定や設計を考えなければいけないので、そこは大変ですね。
――作業効率だけを考えると分業した方が早いようにも思えますが、各工程を把握している宮城さんだからこそ、最適な設計ができるわけですよね。
宮城:そうだと思います。自分で断裁も製本もやるからこそ、身に染みて分かるんです。「ここを揃えて面付けしておけば、断裁が一発で終わるな」とか。事前に頭を使って設計しておくことで、プリント後の仕上げのスピードが速くなります。

教育実習での学びが活きる、「人に伝わる設計」
――少し話題を変えますが、宮城さんはどのような学生時代を過ごされていたのですか?
宮城:学生時代は教員志望でした。中学の社会と高校の地理歴史・公民の教員免許を取得しました。
――そうだったんですね!その時の経験が今の仕事に活きている部分はありますか?
宮城:ありますね。教育実習でもそうですけど、先生って「人に物事を教える前提」で、まず授業の組み立てを考えるじゃないですか。どういう順番で話せば、生徒が迷わずに理解できるか、と。
今の仕事もそうで、同じ部署のメンバーに「こうやって説明すれば分かりやすいな」と考えながら業務の依頼をしています。そう考えるようになったのも、学生時代の学びがあったからだなと感じます。
そのせいで世話好きな性格になってしまった面もありますが。(笑)

自分の仕事を街で見かけることが、何よりの喜び
――では、今後野毛印刷でどのように働いていきたいと考えていますか?
宮城:これから新しい機械を導入する話も出ているので、またワークフローを構築し直さないとなと思ってます。だからこそ、営業や生産管理課のメンバーにも、ただ指示書を回すだけでなく、「工場がどういう流れで動いているのか」を少しでも知ってもらえると嬉しいですね。お互いの意図が噛み合えば、もっとスマートにいいものづくりができるようになると思っているので。
――最後に、宮城さんにとってこの仕事のやりがいは何ですか?
宮城:自分が手掛けた製品が、実際に街の店舗に飾られているのを見かけた時にやりがいを感じます。最近は販促ツールもデジタル化が進んでいますが、そんな中でも、街中で自分が作った「印刷物」が誰かの役に立っていることを感じます。この充実感があるからこそ、ものづくりにこだわりをもって、毎日仕事を続けられているんだと思います。

【インタビューを終えて】
効率的な印刷を実現するデジタル印刷機。しかし宮城が語ったのは、機械の性能に頼るのではなく、「前準備の設計」や「現場での確認」といった、人の手による工夫と判断の重要性でした。
効率化が求められる時代だからこそ、全体最適を考え、一つひとつ丁寧に仕事と向き合う姿勢が大きな価値になる――。宮城の言葉からは、ものづくりの本質が伝わってきました。














