野毛印刷社で働く社員一人ひとりの「仕事観」や「こだわり」に焦点を当て、その原動力を紐解く本シリーズ。
今回は、入社19年目を迎えた加工課の久保に話を聞きました。
型抜き機やカッティングプロッターを操る現場の要でありながら、独学でCADを習得。大量生産の効率性と、一点物ならではのこだわりを両立させる“現代の職人”が見据える、これからのものづくりについて語ってもらいました。
幼少期の牛乳パックの工作が今に繋がっている

加工課 Package Line 久保
――久保さんは現在、工場でどのようなお仕事をされていますか?
久保:メインは「型抜き機」のオペレーターです。印刷された紙を、刃物のついた木型で打ち抜く仕事ですね。
それに加えて、カッティングプロッターやPP機(ラミネーターの機械)の操作、パッケージの設計やサンプル作成などを行っています。
――パッケージの設計まで行っているとのことですが、CADはもとから使えたのでしょうか?
久保:機械を導入したときに講習は受けましたが、ほとんど独学です。でも、やっていてすごく楽しいです。
子どもの頃、牛乳パックでロボットや恐竜を作ったりして、自分のアイデアを形にするのが好きだったんです。30年経って、その感覚が仕事に繋がっている気がします。
――まさに“伏線回収”ですね。
久保:そうですね。(笑)
プライベートでもスニーカーの底を自分で修理したり、自転車をカスタムしたりするのが好きなんです。そういうDIY精神が今の設計業務にも活きていると思います。
休日に家族で出かけても、お土産屋さんの箱をじーっと見て「どうしてこういう形になってるんだろう」とバラしてみたくなります。実際に自分で定規で測って図面を引いて、組み立ててみることもあります。
――以前、ある営業が「久保さんの案がすごい」と絶賛していました。アイデアは普段の生活の中で思いつくこともあるんですか?
久保:そうかもしれないですね。あとは、「組み立てやすさ」と「生産のしやすさ」は特に意識して設計しています。いかに効率的に、かつコストを押さえて作れるか。そこを常に考えながら、「こんな仕様はどうだろうか?」とサンプルを作っています。そうした積み重ねが、面白い提案につながることもあるのかなと思います。
これまで営業や工務など、さまざまな部署を経験してきたこともあって、こういう視点になったのかもしれません。

カッティングプロッターで作成した、ダンボール製のガチャガチャ。
1mm単位の「調整」こそがプロの技術
――「型抜き」の仕事には、どのような難しさがありますか?
久保:「調整」が難しいですね。紙の癖や刃の形によって、機械の中で紙が詰まったり、バラバラになってしまったりするんです。日々、経験豊富な先輩たちに相談しながら、どこを調整すれば良いか見極めて作業を進めています。
例えば、紙の下に“くさび”を入れて水平にして紙を吸い込みやすくしたり、型に“つなぎ”を増やしてバラけないようにしたり。一見すると「紙を置いて抜くだけ」のように見える仕事ですが、実際はかなり細かい経験則の世界なんです。
――型抜きとカッティングプロッター、どちらの方が難しいですか?
久保:圧倒的に型抜きですね。プロッターは優秀な機械なので、データを作ってボタンを押せば基本的に自動で切ってくれます。でも、型抜きはそう簡単にはいかないですから。
一方で、プロッターは「設計の難しさ」があります。データ上では問題なく見えても、実際に組み立ててみると上手くいかないことがあったりして。「ここを2mm小さくしてみよう」とか、そんな調整を繰り返しています。

カッティングプロッターの調整をする久保。
これからの野毛印刷は、守るべき安定と攻めの「クラフト感」

ちょっとした遊び心を入れることも忘れない。(当社のキャラクター「マモリン」)
――久保さんは新卒で野毛印刷に入社されたんですよね。以前と比べて会社の雰囲気に変化はありますか?
久保:かなり変わったと思います。昔は、いわゆる“昔ながらの中小企業”という雰囲気で、勢いで乗り切る部分もありました。今はルールやダブルチェックの体制が整っていて、とても働きやすくなったと思います。
また、以前は「残業して当たり前」という空気もありましたが、今は「どうすれば定時で終えられるか」「他の部署の仕事で協力できるところはないか」をみんなで考えるようになりました。タクシーで帰ることもなくなりましたし。(笑)
――長年働いてきた久保さんから見て、「会社のここはもっと改善できる」と思う部分はありますか?
久保:「昔からこのやり方だから」という理由だけで続いている作業は、まだまだあると思います。そこは見直していきたいですね。
例えば営業に「なぜこの包装方法なんですか?」と聞くと、「前回もこの仕様だったので」と返ってくることがあります。でも、それならもっと効率な方法に変えられるかもしれない。実際、それで改善した例もあります。
工場にはまだまだ改善のヒントが眠っています。現場の声をしっかり拾いながら、無駄を減らしていきたいですね。
――最後に、これからの野毛印刷をどんな会社にしていきたいですか?
久保:会社が掲げる中期計画にもあるように、経営の柱となる安定した事業はしっかり守りつつ、一方で「面倒くさいけど、作ったら喜ばれる」ような、手の込んだ“クラフト感”のあるものづくりを並行してやっていきたいです。
――“クラフト感”のあるものづくり、ですか。
久保:はい。効率一辺倒の大量生産ではなく、あえて手間をかけて、お客さまに「これはすごい」と喜んでもらえるような、職人技が光るような仕事です。現場の人たちのモチベーションにもつながるし、何より作っていて楽しいですから。
――ものづくりの楽しさを大切にしたい、ということですね。
久保:そうですね。仕事が落ち着いている時期などを上手く活用しながら、そうしたクリエイティブな仕事にも積極的に挑戦できる体制を作っていきたいです。
印刷会社としての強みを活かしながら、新しい挑戦を続けていきたいと思っています。

【インタビューを終えて】
「面倒くさいけれど、作ったら喜ばれる」。
この言葉には、野毛印刷が目指すものづくりの本質が凝縮されているように感じました。
効率を追求しながらも、あえて手間をかけることの価値を忘れない。そんな温もりのある技術者の存在が、これからのものづくりに新しい価値を生み出していくのだと思います。














